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放射線の話(1)
2005/08/23 Tue. 18:04
放射線とは、非常にエネルギーの高い電磁波や、弾丸のように飛んでくる原子より小さな粒子線を言います。ガンマ線やエックス線、アルファ線やベータ線など様々な種類があります。

どのくらいエネルギーが高いかというと、原子や分子に衝突したとき、そこにいる電子をはじき飛ばしてしまうほど高いエネルギーを持っています。電子をはじき飛ばされた原子や分子は、電気的にとても不安定になります。つまり性質が尋常でなくなるのです。もし、それがわたしたちの細胞をつくっている原子や分子だったり、あるいは生きていく上で必要になるすべてのプログラムを暗号化したDNA分子だったりしたら、たいへんやっかいなことになります。人体にとって放射線は脅威なのです。

人体にダメージを与える放射線の量は「シーベルト」という特別な単位で測り、一年間に浴びても良い放射線の総量が法律で定められています。一般の人の場合は、自然放射線プラス年間1ミリシーベルトです。この自然放射線というのは、地球上で生活していることで、誰もが普通に浴びている放射線のことです。住む場所によって違いがありますが、世界平均値は年間およそ2.4ミリシーベルトだそうです。

地球に住んでいて自然に放射線を浴びることは避けられません。46億年前に地球が出来たときから、ウラン・トリウム・ラジウム・ラドンなどの放射線を出す原子が、もともと地球に含まれているからです。それで土の中から放射線が出てくるのです。そのような放射線は年間で0.48ミリシーベルトに達します。これらのうちラドンは気体です。地中から立ち昇ってくるラドンを吸うと肺の中にラドンが入り、今度は自分が放射線を出すようになります。それは平均しておよそ年間1.26ミリシーベルトにもなります。あるいは炭素やカリウムなど、人間の身体をつくっている基本的な原子でも、その一部は放射能を持つことが知られています。そのような天然の放射性原子を含む農作物を食べると、やはりまた自分が放射線源になります。これは年間で0.29ミリシーベルトになります。空からももちろん放射線が降り注いでいます。地球上いつでもどこでも降り注ぐそのような放射線は宇宙線と呼ばれ、年間0.39ミリシーベルトになります。

また、宇宙線は高度の高い場所に行けば行くほどたくさん降り注いでいることが知られています。そのため高度1万メートルを飛ぶジャンボジェット機に乗って外国旅行をすれば、やはり余分に自然放射線を浴びることになります。そのような放射線は、ニューヨークまで往復すると1回でおよそ0.2ミリシーベルトになるそうです。また医療目的の検査や治療でも、わたしたちは放射線を浴びています。胃のレントゲン写真は1枚に付きおよそ4ミリシーベルト、CTスキャンが20ミリシーベルトなど、部位によって線量はそれぞれ違います。ちなみにこれらの放射線は、法的規制の対象外になっているそうです。つまり年間1ミリシーベルトの規制の枠に加えないのです。ですからそのような検査を受ける場合は、必要性を自分でもじっくり考えて判断する必要があります。

このようにわたしたちは、空からも地中からも病院からも、さらには自分自身からでさえ、さまざまな放射線を浴びていることになります。それでも人間はおよそ70〜80年、屋久杉などでは2千年も生き続けるのですから、放射線のダメージをある程度修復するシステムを、生命は何かしら身につけているに違いありません。


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